当記事は2017.6.14に公開しましたが、2017.8.19に一部追記・修正をしています。
副業解禁されたはいいけど、何して働く?
これからの働きかたの多様性を考えた時に副業解禁の流れはもちろんあるとして、
政府が副業解禁を義務付けた場合、いったいどのくらい副業をする人がいるだろう。
政府が副業解禁で想定している副業というのは個人事業主としての
週末起業的なイメージだろうか、
それとも時間の切り売りとしての労働だろうか。
副業が解禁された後、もちろん全員が副業をする必要はないけれど、
副業をしたいと思った時に、多くの人には起業はハードルが高い。
ではそんな人たちはどこで副業をするのか。
別の会社でも働きたいと思ったとき、
受け皿となる副業者受入体制がある企業は少ない。
そんなことを考えていた矢先、偶然にも中村龍太さんが
講師を務めるセミナーに参加した。
その数日後、サイボウズではすでに複業採用をしていることを知り、
サイボウズがどうやって副業受入れ制度の導入に至ったのかを伺いたく、
龍太さんに依頼してお話の機会をいただいた。
龍太さんが所属する株式会社サイボウズは副業OKの会社として有名で、
龍太さん自身も複業をされている。
今、複業採用を打ち出した理由
以前から副業解禁を打ち出していたサイボウズが、
なぜ今複業採用を打ち出したのか。
電通の残業問題をきっかけとして、世の中の働き方や
働き方改革への関心は非常に高まっている。
龍太さんは「来年では意味がなく、今年でなければダメだった。」と言う。
それについては非常に同感だ。
確か「保育園落ちた、日本死ね」という匿名の書き込みが
話題になったように、昨年の関心は女性活躍推進だったように思う。
しかし今年に入って女性活躍の波は確実に昨年より弱まっている。
そして今年、働き方や副業というトピックについては
昨年の女性活躍のような波がきている。
だが、この流れは来年もあるかわからない。
世間の副業への注目度の高さを感じて、メディアの役割として複業採用を打ち出し、
優秀人材を確保したいという狙いがあるようだ。
サイボウズの複業採用のルールとは?
多くのメディアで語られているように、
サイボウズが副業解禁に至った大きな理由は
「複業をしない理由が見つからなかったから」というものだ。
加えて複業を認めることで、これまで関わりのなかった領域での
顧客との接点の創出などメリットが多いということも言われている。
龍太さんの場合で言えば、IT(サイボウズ)×農業(NKアグリ)だ。
しかし、今自社で働いている社員の副業を認めることと、
複業採用は同じことではない。
残業代や雇用保険などの問題をどのように
クリアしているのだろうと伺ってみた。
答えは単純明快で「細かいルールは作っていない」ということだった。
ちなみにサイボウズで複業する場合、会社資産の利用がなく、
他社で雇用されない限り、許可はいらないそうだ。
(パソコンを複業で使用する場合は、会社への登録は必要)
どうやって複業採用しているか
ずばりそれはコミュニケーションの一言に尽きる。
細かいルールを作るのではなく、複業者と企業が
コミュニケーションコストをかけることで問題を未然に防いだり、
問題が起こったとしても解決をしている、ということだ。
コミュニケーションの際の軸となるのが、「チームワークあふれる社会を創る」
というサイボウズの理念だ。
理念と照らし合わせ、「◯◯を実行したら、チームワークあふれる社会に
なるかどうか?」を軸にディスカッションがなされる。
これは裏を返せば、サイボウズの経営層や社員にとっては
問題が起こることは決してマイナスではなく、
会社の理念に対する意味づけを議論する場になる
というプラスの捉え方だ。
副業解禁、複業採用から思ったこと
お話を伺う前は、サイボウズは複業採用をどんな制度で運用しているのだろう、
何か斬新なルールがあるのかもしれないと考えていたが、
その期待は良い意味で裏切られた。
- ガチガチで細かいルールは作らない
- 理念に照らし合わせ、コミュニケーションコストを
かけて解決していく
これが実現できる要因はひとえに最適な人材を採用できた結果であり、
そこには会社の社員への信頼がある。
社員全員が会社の理念に対して腹落ちしているので
ディスカッションも成り立つのだろう。
個人にとって働き方は非常に重要な関心事だが、
企業にとって重要なのは働き方ではなく会社に利益を
もたらしてくれるかどうかだ。
昨今の働き方ブームの裏にはどんな働き方でもいいから
会社に利益をもたらしてね、というメッセージがある。
大企業などが副業解禁をしない理由はさしあたって『困ってはいないから』だ。
今の働き方でも利益が確保できる、または働き方を
変えるコストとリスクが大きすぎると思っている、
または働き方ではない部分での改革によって利益を増やしたいなどなど。
そして社員数の多さはコミュニケーションコストをかけることの難しさにつながっているし、
多くの人を採用すればするほど会社の理念を理解して入社してくる人材が
少なくなる可能性は増える。
逆を言えば、副業解禁をしている、これからするという会社は、
かなりの危機意識を持って会社を改革していきたいと考えているのかもしれない。
サイボウズにあって、あなたの会社にないものは何か。
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