「職場の問題地図」の著者 沢渡あまねさんがファシリテーターを
務める働き方についてのトークイベントに行ったのでレポートを書いてみました。
「職場の問題地図」発見sight
〜明日からの働き方をデザインする〜・さくらインターネット株式会社 人事部マネージャー 清水 能子氏
・株式会社ビザスク CEO 端羽 英子氏
・freee株式会社 COO 東後 澄人氏
・株式会社オトバンク CEO 久保田 裕也氏
24日のテレワークデイでは多くの会社で試験的に
リモートワーク・在宅ワーク等を含めたテレワークの取り組みが
行われたようです。
働き方を変えよう!と言う流れは大きくなってきているものの、
実際には表面的な総労働時間削減だけで終わってしまうのではと
危惧する声も聞こえます。
イベントでは沢渡さんの司会のもと、4社の働き方の工夫のお話があり、
「働き方を変える」ということの本質について、みなさんの意見が
飛び交っていました。
「働き方を変える」から「生産性向上」へ
働き方を変えるというキーワードと、電通問題を皮切りに
多くの企業で勤務時間の見直しが図られています。
しかし単なる勤務時間短縮では、競争力低下を招くことは明らかであり、
世間の関心は今、働き方よりもむしろ「生産性向上」へと向かっています。
では生産性を向上させるにはどうしたらいいのか。
- 自分の生産性は自分で上げろ
沢渡さんが何度もおっしゃっていました。
会社員も生き残りの時代です。自分の生産性は自分で上げろと。
ただ「生産性を上げるために合う方法・合わない方法」が人それぞれある。
つまり、生産性を上げるために自分に最適な方法を見つけていこう
ということなんですね。これが重要ポイントだと思います。
会社が一律的に「働き方を変える」として、一つのやり方を押し付けるのは
「働き方改革」でもなんでもないんです。
押し付けられた瞬間に、モチベーションが下がる→生産性が下がるという
構図は容易に想像ができます。
- 「言える化」と「見える化」が大切
仕事の量や成果についての「見える化」が重要であることは長年言われてきています。
それに加えて本当に重視すべきは「言える化」です。
例えば、会議が多い大企業などでは
「この会議、無駄じゃないですか??」
これが言いにくい。実はみんなが思っているのに、です。
生産性を向上させるための意見具申が言いにくい、これこそが問題なわけです。
働き方改革が重要トピックになっている今だからこそ、多くの会社はこの流れに乗って
「無駄なことは無駄」と言える風土を築くべき。
この流れに乗れなかった会社は、「言える化」のタイミングを失い、
無駄をカットできず、それが後々ボディブローのように効いてくるだろうと。
さくらインターネットの取り組み
- さぶりこ
さぶりこ(Sakura Business and Life Co-Creation)のことだそうです。
会社に縛られず広いキャリアを形成(Business)しながら、
プライベートも充実させ(Life)、その両方で得た知識や経験をもって共創(Co-Creation)へ
つなげることを目指しています。
このさぶりこを考え、定着させる際の人事部の指針が3つ。
「性善説」「制度より風土」「制度はメッセージ」だったそうです。
働きやすさのために作った制度が悪用(要はさぼったりする)されるケースはないのか?
との質問も上がっており、それに対する答えは「あります。」ということでした。
けれど、悪用しようとする少数のために、大多数の働きやすさを阻害してはいけない、
そこは経営陣が腹をくくって性善説に立とうという結論に至ったそうです。
また面白かった制度としては「ショート30」というもので、定時までに今日の仕事が終わった場合
定時を待たずに30分早く帰社していい、という制度でした。
freeeの取り組み
freeeの東後さんが強調されていたのが以下3点でした。
- メンバーサクセス
freeeは人事総務領域業務をメンバーサクセスチームとして位置付けています。
総務人事の仕事はメンバーのサクセスをバックアップするための仕事である、という考え方です。
それこそ自社の商品であるクラウドソフトを使い倒して、通常の会社であれば
3.1人の総務担当者を要する仕事を0.5人分の仕事にして、効率化しているのだとか。
- 価値基準
freeeらしい価値基準とは何か?をボトムアップで社員が考えたそうです。
例えば5つのうちの一つ「アウトプット→思考」。これはアウトプットをとにかくすべし!という
価値基準なので「とりあえずやってみました!」ということを誰も否定できない。
5つの価値基準に沿っていれば、誰もやったこと・やることに対して否定ができない仕組み。
これは社員が40人を超えたあたりで、それぞれが何をやっているのかの把握が難しくなり、
らしい価値を定めないと、組織がバラバラに分解しそうだ、と危機感を持って定めたもの。
- あえて共有する
しょうもないことでも「あえて」共有する文化を作っているとのこと。
会議の議事録も公開されており、コメントをすることも可能というのには驚きました。
社内の意思決定の詳細が全員に公開されていることが重要なんですね。
ビザスクの取り組み
ビザスクはCEOがワーキングマザーの端羽さんなので、とても共感できるところが多かったです。
端羽さんは当たり前を壊すことを目指して、制度の構築にあたったという方。
主なものとしては
- 家事代行サービス代の支給
これは使ったら得だけど、使わなかったら損という制度(使わない人に現金支給はない)。
人は使わないと損だなと思うと結構使うものらしいです。
そして、今までの「家事代行って頼んでいいのかな?」という価値観を壊すことにも
つながったとおっしゃっていました。
- 成果の見える化
これもよく言われますが、興味深かったのは「残業代と成果を比べて、残業代は少ないのに
成果を出している人(要は生産性の高い人)が昇給しやすくしている」という点でした。
- 人生の全期間でワークライフバランスを考える
ワークライフバランスは人生の全期間において、全員が一律ではない、という考えのもと
猛烈に働きたい時はそのように、子どもとの時間をとりたい時はそのように働けるよう
配慮しているそうです。
これ、実はめっちゃ大事だと個人的に思いますし、非常に共感しました。
過労で倒れるのはもちろん論外ですが、労働時間短縮といって一律で帰らされるのも
正直とても疑問です。長時間労働を強いるということではないけれど、
ココ!という時は徹夜もするけど、休む時はガッツリ休む。というように
人の人生設計によって仕事の濃度やかける時間は実際にはかなり変わるはず。
この考え方を採用することで、働き方は大きく変わるんだろうなと。
新卒時期、子育て時期、などで働き方に濃淡をつける。
オトバンクの取り組み
オトバンクの久保田さんは飄々とした方で「代表の僕が言うのもなんですが、
会社っていつか潰れるじゃないですか」とさらっと言っていたのが印象的でした。
だからこそ、オトバンクと関わった人には「あの会社にあの時いてよかったな」と
思ってもらえる会社にしたいんだそうです。
- 全く違う人を採用する
そうすることで非生産的なことの一つである派閥争いがそもそも生まれないらしいです。
さらに違いすぎるとコミュニケーションが必要になるので、逆にコミュニケーションを
取らざるをえない。
- 言った人・やった人がえらい
これはfreeeさんの価値基準に通ずるところもありますが、間違っていたとしても
まず言った人・やった人が褒められる文化を作っているということです。
間違ったことを言ったとしても、やったとしても、その人の言動が発端となって
良し悪しの議論になったりしたことを自体を評価する。
そうすることで沢渡さんの言ういわゆる「言える化」を進めている。
働き方を変える取り組みのまとめ
それぞれの会社が社員に最大限パフォーマンスを発揮してもらうための
働き方を試行錯誤で実施しているという印象でした。
このイベントを通して思ったことは、今働き方改革が叫ばれているけれど、
これらって昔で言うところのいわゆる福利厚生にあたることなのかなと
ふと思いました。
今は当然になっている産休・育休・介護休暇・時短勤務・社宅(あんまり今はないかな?)
などなど、これらも全て社員のパフォーマンスを上げるためのものだったはずで、
これらの制度を作った時はきっと画期的とか、とても重宝される制度だったんでしょう。
けれど、激動の時代に生き残るために、企業が社員に求める成果が大きくなっている
のと同時に、社員も企業に最大限機能発揮できる環境を求めるようになったのだなぁと。
今は働き方改革の流れでリモートワークなどがトピックになっているけれど、きっと数十年後には
リモートワークなんて当たり前すぎてどうでもよくなってて、またもっと別のものが
求められるようになるんでしょうか。
今、日本で語られている働き方のほとんどが「どれだけ社員の生産性をあげて長期間
自社で働いてもらうか」ということですが、一方で「イノベーションを起こすことができるような
働き方」への注目度も今後高まっていくのだろうなと思います。
どんどん仕事とプライベートの垣根がなくなるであろう将来を生き抜くために
必要なのは「好きなことを継続的にやり抜いて稼ぐこと」なんだろうと
改めて感じました。
コメントを残す